仙台高等裁判所 昭和48年(ラ)90号 決定 1973年10月29日
抗告人(債権者)
農林漁業金融公庫
右代理人
平野鋭一
同
株式会社青森銀行
右代表者代表取締役
鈴木恭助
主文
抗告人農林漁業金融公庫の本件抗告を却下し、株式会社青森銀行の本件抗告を棄却する。
抗告費用は株式会社青森銀行の負担とする。
理由
一株式会社青森銀行は抗告人農林漁業金融公庫の抗告代理人として原決定を取消しさらに相当の裁判を求める旨申立てたが、理由書を提出しなかつた。
二本件記録によると、抗告人(債権者)農林漁業金融公庫の法令による代理人平野鋭一が債務者佐藤六郎、物上保証人佐藤仁太郎、同佐藤春夫に対する昭和四二年八月五日付金銭消費貸借契約公正証書及び同日付抵当権設定証書に基づく同公庫の抵当権実行のため競売申立より事件終結までの一切の件を、株式会社青森銀行に委任したことが明らかである。競売法二四条には不動産競売の申立は代理人によつてこれをなすことをうる旨の規定があり、代理人たる資格について何らの制限がないのであるから、その代理人となる者は必ず弁護士であることを要するものではなく、従つて、競落許可決定に対し抗告をなす場合においても必ずしも弁護士を代理人としなければならないものではないとするのが従来の判例であり、実務上もそのように取扱われている(大審院大正三年三月四日決定参照)。しかしながら、任意競売の手続においても、競売申立についてはともかく、少くとも抗告手続は判決手続又はこれに準ずる裁判手続であるから、民訴法七九条の適用ないし準用があり、弁護士でなければ代理人となることができないものと解するのが相当である。したがつて株式会社青森銀行が抗告代理人としてなした本件抗告は不適法としてこれを却下すべきである。
三ところで、株式会社青森銀行は、本件不動産競売事件の利害関係人であることが記録に徴し明らかであるから、独自に抗告申立権があり、前記公庫の代理人としてではなく、利害関係人本人として本件抗告をした趣旨に解されないではない。しかしながら、本件記録を精査してみても、原決定を取消すべき何らの違法も見出し得ないから右抗告は失当としてこれを棄却すべきである。
四よつて民訴法九五条、八九条、九九条を適用して主文のとおり決定する。
(佐藤幸太郎 田坂友男 佐々木泉)